netzine
[netzine top]  [21CB toppage]
[サイバースペースの救世主]  [領地の分捕り合戦]  [大金が飛び交うドメイン名]  [まだ遅くない]


004号 『サイバースペースの欲望』  

ホームページのURLも,Eメールのアドレスも,自分の看板だと思っている人。
そんな人はぜひ今週号を最後までお読みください。



サイバースペースの救世主

  人間がなにかを記憶するための情報空間(インフォスフィア)は、人類が誕生する前からあった。 つまり空気と似たような自然環境なのだ。その仕組みはまったくの謎だ。 しかも神秘といっていいほど奥が深い。 いまのところ、地球、そして地球を包み込む宇宙空間そのものが情報空間として機能しているのだろうと想像するほかはない。 この情報圏にアクセスする装置は人間の頭脳だと考えられている。 目に見えない空気のメカニズムが科学によって解明されたように、いずれ情報圏も科学的に解明される日が来る。

  他方、コンピューターのための記憶空間は人間が創った。 メモリーと呼ばれる半導体チップに弱い電流を流し続けるか、あるいはディスクと呼ばれる薄い金属板などに磁気を帯びさせて情報を保っている。 メモリーによる記憶は人間の記憶努力を連想させ、ディスクによる記憶はノートにメモをとる行為を連想させる。

  コンピューターの記憶空間は人間が創ったものなので、その情報空間の仕組みは科学者や技術者が知っている。 わたしたちも、勉強し、ネットを体験すれば、おおまかにこの人工情報圏のメカニズムを理解することができる。

  コンピューターとそのネットによるデジタル情報空間は「サイバースペース」(cyberspace)と呼ばれている。 人工的なデジタル情報が飛び交う宇宙空間というニュアンスだ。サイバースペースの観念を最初に広く紹介したのは1984年に小説家ウイリアム・ギブソン(William Gibson)が発表したSF小説「ニューロマンサー」(Neuromancer)だった。この小説は、ハッカーの脳をコンピューターに直結し、プログラミングの限界を破って人工知能を救うという奇想天外な物語だ。 人類の精神的革命家は救世主とか宗教革命家などと呼ばれるが、ウイリアム・ギブソンはサイバースペースの救世主を描いたことになる。

  サイバースペースは、日本語では「電脳空間」と訳されている。

  サイバースペースは電子的なバーチャル(仮想的)な情報空間である。 とはいえ奇妙に自然の情報圏と似たところがあるので、根っこはいっしょなのかもしれない。

  利用者が1億人を超えるインターネットは世界最大のサイバースペースだ。 この情報空間は経済的にも文化的にも非常に価値の高いものなので、「ここからここまではあなたのもの」という区画に分けないとトラブルが発生する。

[BACK 004号top] [NEXT 領地の分捕り合戦]



領地の分捕り合戦

  サイバースペースは半導体チップかディスクの集合体だ。これは目に見える。 だがサイバースペースそのものは透明な情報圏なので、目に見えない。 だから「ここからここまでは私のもの」という主張は難しい。 ところが地図上の国境や都市郊外の住宅団地なら目に見える。 そこでサイバースペースを住宅団地になぞらえて区画整理をしようということになった。 採用された概念は「領地」を意味するドメイン(domain)だった。

  ドメインは、大きなコンピューターネットを小さなグループに分け、それぞれを識別する概念として用いられてきた。 アメリカの州と郡と市町村、あるいは日本の都道府県・郡・市町村区と同じく、 コンピューターネットでもそれぞれのグループに「picnic.org」や「sphere.ne.jp」などの名前を与えて管理している。

  インターネットでは、[.com] [.net] [.org]の3つがトップレベル・ドメイン(ITLD, International Top Level Domain)として用いられてきた。

  [.com] [.net] [.org]の3つは国際ドメインなので国の名は付かない。いわば国籍不明のドメインだ。 インターネットはアメリカで誕生したため、この3つのドメインはアメリカの企業や団体や個人が先行して独占的に取得した。 特に[.com]は「ドット・コム」という発音が好まれたため、ほとんどアメリカの人々によって取得された。 このため[.com]は、あたかもアメリカの国を意味するドメイン名と錯覚されたこともあった。 しかしあくまでも国際ドメインなので、まだだれも登録していなければ日本人でも取得できるし、現に日本企業がトップレベル・ドメインを使用しているケースもある。 たとえば朝日新聞の「アサヒ・コム」が有名だ。

  [.com] [.net] [.org]のトップレベル・ドメインを除くと、 国別のドメインが最大の分類単位となる。 たとえば日本なら[jp]だ。

  次いで組織の種類、そして個別組織という階層構造によって分割管理されている。

  ちなみにドメインの概念を採用しているのはインターネットだけではない。 一私企業が運営管理するローカルネットワーク(いわゆるLAN)でも、多数のユーザーの管理などを目的にドメインを用いることが多い。

[BACK サイバースペースの救世主]  [NEXT 大金が飛び交うドメイン名]



大金が飛び交うドメイン名

  サイバースペースに欲望が渦を巻く。 ある種のドメイン名は企業のイメージを高める看板となる。 しかも粋なドメイン名は顧客を増やす効果があるため、その取得をめぐって大金が飛び交ってきた。 たとえば[tv.com]はテレビ局が、[windows]はマイクロソフト社が、[travel]は旅行エージェントが欲しがった。

  「コンピューター・ドット・コム」[computer.com]というドメイン名は、あるアメリカ人プログラマーが個人的に取得した。 20万ドル(2,200万円)の値がついたが売らなかった。 50万ドル(6,000万円)なら考えるという。

  仮に[travel.com]というドメイン名を手に入れたとする。 そうすると、という名前のホームページを開くことができる。 さらに[jack@travel.com]や[mary@travel.com]といったEメールのアドレスを自由に付けることができる。

[BACK 領地の分捕り合戦]  [NEXT まだ遅くない]



まだ遅くない

  世界中のドメイン名を割り振っているのはインターニックという国際組織だ。 インターニックはドメイン名についてユーザーに干渉しない。 だからドメイン名が売買されることにもなった。

  では、[travel.com]というドメイン名はまだ未登録なのだろうか。 それともだれかが取得しまった後なのだろうか?  これを調べる方法がある。あきらめることはない。 案外ととびきり凄いドメインが手つかずで残っていたりする。

  ネットワーク・ソリューションズ社の ドメイン名登録サービス[WORLDNIC-JP]を訪ねてみよう。 そのドメインが登録済みかどうか簡単に検索できる。

  [WORLDNIC-JP]では、そのドメイン名がまだ未登録なら、比較的安価な料金で取得の手続きを代行してくれる。 インターネット上にホストコンピューターを持っていないのなら、 とりあえず一般のプロバイダーに開設したホームページとEメールのアドレスへ転送してくれる転送サービスも行っている。

  登録済みのドメイン名をいったいだれが取得したのだろうか知りたければ、 インターニックのwhois というデータベースで調査するといい。 詳しい情報が手に入る。 取得者の電話番号やファックス番号まで知ることができる。この方法で apple を調べてみた。 するとシリコンバレーのアップルコンピュータ社が apple 関係のドメイン名を独占しているわけではないことが判明する。

  なお、ドメイン名として使用できる文字は、 半角のアルファベットの小文字か大文字(区別される)、半角の数字、そして半角のハイフォン[-]の記号だと決められている。 漢字などの全角文字や半角カナなどは使えない。

堤大介
[BACK 大金が飛び交うドメイン名]



お知らせ


[netzine top]  [picnicbooks toppage]

[ピクニック企画]  [編集長の横顔]  [堤大介のオンライン・エッセイ]  [toru@picnicbooks.net


netzine  ©Picnic Plan Publishing Inc,1999-2014/1988-2022